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七つの海のときどき航海日誌
七海生産者商会の会長が徒然と書き留めてみた大航海時代の由無しごと。
海に出られない午後は、のんびり読書ですごしましょう。
まいどときでござます(o_ _)o

読書といいつつ、いきなり漫画でごめんなさいな今日の一冊。
でもうちが一番大切にしたい一冊。

「神戸在住」 (木村紺/アフタヌーンKC 全10巻)


神戸の大学に通う、ちょっと控えめな女の子、辰木桂(たつき かつら)が出会った、
たくさんの人々との交流や何気ない普段の生活を描いた物語。
様々な地域、人種、障害などをもった人々が、ときに儚く、力強く生きている様、
そして、神戸の街の何気ない風景や小さな観光地などが、
スクリーントーンを一切使わない、ペンの濃淡だけという手間のかかる手法で、
とても写実的に、そしてとても繊細に描かれています。

人物の描写や、主人公の心の描写がとってもリアル。
みんなの個性も話し言葉も、現実が入り混じる神戸の街並みも、何もかもがリアル。
描かれるのは、普段の生活の中に転がっている、嬉しさ、楽しさ、悲しさ、苦しさ、
誰もが体験したことのあるはずのことばかりで、いろんなものを共有できる気がします。
むしろうちは、没入しちゃって、何度読んでも一緒に泣いたり笑ったりできるくらい。
それくらい、しっかりと心に届く作品です。

また、この作品は漫画としては数少ない、
阪神大震災の事を作中に取り上げていることも特徴のひとつ。
震災後に神戸にやってきた主人公が、友人から伝え聞く形で語られるその物語は、
当時の神戸を知らない読者の心にも、とても生々しく響いてくることでしょう。
この「震災編」、涙無しには読めません。
こんなに本気で泣ける漫画、うちはほかに知りません。

今この本を取り上げたのはもちろん、現実に起きている震災と、無関係じゃありません。
テレビでは見えないもの、報道では聞こえないもの、たくさんの現実がそこにあること。
それを教えてくれる気がします。

今だからこそ、読んでほしい。

うちは、この作品は、いわゆる娯楽的な「マンガ」じゃないと思ってます。
文学作品にもたとえられそうな、この作品独特の世界を、
是非あなたにも知ってもらいたいから。

せっかくだから、もう少し解説を加えておこう。
誰かに紹介するという目線で久しぶりに読み返して、
あらためて感じたことなどが書けたらいいかなあ、と思う。

~作品の背景~
作者にとっては、この作品がはじめての作品となる。
1997年にアフタヌーン四季賞を受賞し、その翌年から連載が始まっている。
そういう意味では1巻目は絵柄を乱れがちだと不安に感じるかもしれない。
でも、1巻の後半ではじめて描かれる震災編を挟んで、非常に絵柄が安定してくる。
2巻目からはとても落ち着いて、安心してみていられるようになる。
作者は、この作品で第31回日本漫画家協会賞の新人賞を受賞している。
それだけの評価を受ける素地のある作品だということなので、
1巻目の絵柄だけでつまづきそうになったひとも安心してほしいと思う。

70年代生まれの作者は大学時代を神戸で過ごしているらしく、
この作品の背景にもその体験が存分に取り入れられている。
また、作中には震災にまつわるエピソードが、いくつも取り上げられている。
これらは、作者の知人の体験などをもとに描かれているとはいえ、
作者自身も阪神・淡路大震災で被災していて、物語の迫力と説得力につながっている。
作者の生まれた時代や物語の背景、いろんな好みがうち自身に重なるところが多く、
それが、うちのこの作品への愛情につながってるんじゃないかなと感じている。

~作品の概要~
主人公の辰木桂(たつき かつら)は東京出身の女の子。
引っ込み思案で、恥ずかしがりや、傷つきやすくて、涙もろい、そんな普通の子。
父の仕事の都合で家族で神戸へ引越し、大学から神戸で生活をしている。
通うのは、神戸・北野にある総合大学。(モデルはあるが架空の学校)
その大学の美術科に通っている。

作中には、美術・音楽・文学・演劇などの知識が随所にちりばめられていて、
作者の好みやオススメなどがとてもよく映されているように感じる。
各話の扉絵には季節の花などが描かれていることが多い。
作品全体で「ベタ塗り」「スクリーントーン」などの漫画的な技法を用いず、
陰影も全てフリーハンドの横線の濃淡だけで表現されているなど、
これだけでひとつの美術作品とも言えそうだと感じている。

また、各コマの背景に描かれるのは、その多くが本物の神戸の風景である。
もちろん全て前述の技法で、非常に細かく描かれている。
そのコマの風景を探して、写真に撮りためた方のホームページも存在するほどである。
                              ⇒『神戸在住』の風景
現実と架空が入り乱れて、とてもリアルな物語を読んでいると、
まるで主人公が作者自身の分身ではないか、本当にその場にいたんじゃないか、
という錯覚を起こしそうになる。

作中にはひと癖もふた癖もあるような、魅力的・個性的な人物がたくさん登場する。
それぞれが色々な人生を歩んでいて、さまざまな影を背負っている。
時折ふと見せる悲しみの表情、それを見てどきりとする主人公‥‥むしろうち自身。
そんな登場人物たちとの、心温まる話が数多く描かれ、思わず笑顔がこぼれてしまう。
さらに作中の登場人物の話し言葉がとても細かく描き分けられている点も注目。
同じ関西でもこれほどまでにバリエーションが豊富なのかと思えるほど、
出身地によって話し言葉をきっちりと描き分けている。
はじめてそれを読み取ったときに、関西出身のうち自身でも気付かなかったほどの
とても細かい描写に、非常に驚きを感じたことを今でも覚えている。
播州・神戸・尼崎・大阪・京都・滋賀・奈良・和歌山・東京・江戸・土佐・沖縄
耳にすると確かに違うそれぞれの言葉。
これだけの言葉を描き分ける自信は、うちにはない。

物語は主人公の一人称の視点で描かれていて、
1話完結の随筆のような形式で進められていく。
主人公の気持ちを補うように、主人公のモノローグが、コマとコマの間に
作者の手書きの文字で書き入れられている。
よく、文学作品などでは、行間を読み取るなどということが言われるが、
この作品では行間がちゃんと存在するので、主人公の気持ちをくみ取りやすい。
それだけ、物語に没入しやすい、ということなのかもしれない。

物語は全体的に、大きな抑揚がなく、平穏な毎日を描いている。
たまに見つけた、季節の美しい話題、綺麗な風景、小さな喜び、友人との時間
誰もが共感できる小さな幸せがちりばめられていて、
作品全体に、とても静かな時間が流れていると感じられる。
各話の中でも印象的なのが、震災の話、人の死の話などの悲しみの話。
悲しみや嘆きに対しても、作者がしっかりと向き合って、
心理描写などが非常に緻密に描かれているので、
物語全体のリアルさとあいまって、感情移入せずにはいられない。

ふと空いた時間に、お気に入りの本を読むように、
お気に入りの話だけを、何度も読み返したくなるような。
本気で泣きたい夜に、ひとりだけで読みたくなるような。

散歩の途中で見つける、小さな幸せが好きな人。
いつも思わず一歩引いてしまう、引っ込み思案な人。
純粋に神戸が好きな人、静かな時間が好きな人。
まだこの物語を知らない、そんな人たちに、是非手に取っていただきたい、そんな作品。
漫画なのに、漫画じゃない、うちにとって、とても大切な作品。
文字だけじゃ伝わらないこの作品の魅力、ぜひあなたにも感じてもらいたい。



▲閉じちゃう▲
せっかくだから、もう少し解説を加えておこう。
誰かに紹介するという目線で久しぶりに読み返して、
あらためて感じたことなどが書けたらいいかなあ、と思う。

~作品の背景~
作者にとっては、この作品がはじめての作品となる。
1997年にアフタヌーン四季賞を受賞し、その翌年から連載が始まっている。
そういう意味では1巻目は絵柄を乱れがちだと不安に感じるかもしれない。
でも、1巻の後半ではじめて描かれる震災編を挟んで、非常に絵柄が安定してくる。
2巻目からはとても落ち着いて、安心してみていられるようになる。
作者は、この作品で第31回日本漫画家協会賞の新人賞を受賞している。
それだけの評価を受ける素地のある作品だということなので、
1巻目の絵柄だけでつまづきそうになったひとも安心してほしいと思う。

70年代生まれの作者は大学時代を神戸で過ごしているらしく、
この作品の背景にもその体験が存分に取り入れられている。
また、作中には震災にまつわるエピソードが、いくつも取り上げられている。
これらは、作者の知人の体験などをもとに描かれているとはいえ、
作者自身も阪神・淡路大震災で被災していて、物語の迫力と説得力につながっている。
作者の生まれた時代や物語の背景、いろんな好みがうち自身に重なるところが多く、
それが、うちのこの作品への愛情につながってるんじゃないかなと感じている。

~作品の概要~
主人公の辰木桂(たつき かつら)は東京出身の女の子。
引っ込み思案で、恥ずかしがりや、傷つきやすくて、涙もろい、そんな普通の子。
父の仕事の都合で家族で神戸へ引越し、大学から神戸で生活をしている。
通うのは、神戸・北野にある総合大学。(モデルはあるが架空の学校)
その大学の美術科に通っている。

作中には、美術・音楽・文学・演劇などの知識が随所にちりばめられていて、
作者の好みやオススメなどがとてもよく映されているように感じる。
各話の扉絵には季節の花などが描かれていることが多い。
作品全体で「ベタ塗り」「スクリーントーン」などの漫画的な技法を用いず、
陰影も全てフリーハンドの横線の濃淡だけで表現されているなど、
これだけでひとつの美術作品とも言えそうだと感じている。

また、各コマの背景に描かれるのは、その多くが本物の神戸の風景である。
もちろん全て前述の技法で、非常に細かく描かれている。
そのコマの風景を探して、写真に撮りためた方のホームページも存在するほどである。
                              ⇒『神戸在住』の風景
現実と架空が入り乱れて、とてもリアルな物語を読んでいると、
まるで主人公が作者自身の分身ではないか、本当にその場にいたんじゃないか、
という錯覚を起こしそうになる。

作中にはひと癖もふた癖もあるような、魅力的・個性的な人物がたくさん登場する。
それぞれが色々な人生を歩んでいて、さまざまな影を背負っている。
時折ふと見せる悲しみの表情、それを見てどきりとする主人公‥‥むしろうち自身。
そんな登場人物たちとの、心温まる話が数多く描かれ、思わず笑顔がこぼれてしまう。
さらに作中の登場人物の話し言葉がとても細かく描き分けられている点も注目。
同じ関西でもこれほどまでにバリエーションが豊富なのかと思えるほど、
出身地によって話し言葉をきっちりと描き分けている。
はじめてそれを読み取ったときに、関西出身のうち自身でも気付かなかったほどの
とても細かい描写に、非常に驚きを感じたことを今でも覚えている。
播州・神戸・尼崎・大阪・京都・滋賀・奈良・和歌山・東京・江戸・土佐・沖縄
耳にすると確かに違うそれぞれの言葉。
これだけの言葉を描き分ける自信は、うちにはない。

物語は主人公の一人称の視点で描かれていて、
1話完結の随筆のような形式で進められていく。
主人公の気持ちを補うように、主人公のモノローグが、コマとコマの間に
作者の手書きの文字で書き入れられている。
よく、文学作品などでは、行間を読み取るなどということが言われるが、
この作品では行間がちゃんと存在するので、主人公の気持ちをくみ取りやすい。
それだけ、物語に没入しやすい、ということなのかもしれない。

物語は全体的に、大きな抑揚がなく、平穏な毎日を描いている。
たまに見つけた、季節の美しい話題、綺麗な風景、小さな喜び、友人との時間
誰もが共感できる小さな幸せがちりばめられていて、
作品全体に、とても静かな時間が流れていると感じられる。
各話の中でも印象的なのが、震災の話、人の死の話などの悲しみの話。
悲しみや嘆きに対しても、作者がしっかりと向き合って、
心理描写などが非常に緻密に描かれているので、
物語全体のリアルさとあいまって、感情移入せずにはいられない。

ふと空いた時間に、お気に入りの本を読むように、
お気に入りの話だけを、何度も読み返したくなるような。
本気で泣きたい夜に、ひとりだけで読みたくなるような。

散歩の途中で見つける、小さな幸せが好きな人。
いつも思わず一歩引いてしまう、引っ込み思案な人。
純粋に神戸が好きな人、静かな時間が好きな人。
まだこの物語を知らない、そんな人たちに、是非手に取っていただきたい、そんな作品。
漫画なのに、漫画じゃない、うちにとって、とても大切な作品。
文字だけじゃ伝わらないこの作品の魅力、ぜひあなたにも感じてもらいたい。


コメント
この記事へのコメント
10巻まで、ついさっきやっと読了。
まだ胸がいっぱいで、涙こぼしながら書いてたり。

10巻の帯にある一文をここに書きとめとこう。

「一生、読み続けられる本。

 分かり合えない。分かり合いたい。
 分かち合えない。分かち合いたい。
 生きているから抱く 感情のざわめき。
 生きているから出会う 日々の揺らめき。
 神戸で暮らす大学生・辰木桂の目を通して描かれる、
 移ろう四季と心模様。
 かけがえのない、当たり前の日常――。

 嬉しい時、悲しい時、いつもと変わらない時……。
 そっと読み返して欲しい、そんな物語。」

読み返しながら、うち自身のいろんな思いを重ねてることに気が付いた。
もっとたくさんの想いがそこにあったはずなのに、どうして今まで忘れてたんだろう。
どうして今まで、見えないふりをしてきたんだろう。
いつの間にか言葉を紡ぐことを忘れていたうちの心に、
あったかいものがそっと寄り添ってくれた、そんな気がした。
自分の気持ちに触れるのが怖かったんだ‥‥なんとなくそう思った。
言葉を紡いでけるといいな、自分を書き留めるよに。
少しずつ、少しずつ、自分の気持ちを確かめるよに。
2011/03/26(Sat) 00:53 | とき URL #mQop/nM.[ 編集]
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