七つの海のときどき航海日誌
七海生産者商会の会長が徒然と書き留めてみた大航海時代の由無しごと。
ももの裏稼業繁盛記

ときの居ぬ間にごにょごにょ‥‥まいどこにちはももいのです。

めずらしく続いちゃってる美術展巡り。
レンブラントを見てきたというふぃーさんのリクエストにお応え(?)して、
今回は愛知で開催中のふたつの美術展をまとめてご紹介。

まずはふぃーさんも見たという、名古屋は白川公園にある名古屋市美術館で開催中の
「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」
導入部の9点と弟子による1点を除いて、すべてがレンブラントという稀に見る展覧会。
また、絵画は12点だけで、残りはすべて版画で構成されている点も珍しいかも。

レンブラント通の人には「何をいまさら」なことでしょうが、
レンブラントは生前から、版画家として名声を得た人だったのです。
今回の作品の中にも、百グルデン版画と呼ばれる作品が含まれています。
当時の労働者の年収が200グルデンだったと言われているので、
1枚の版画でその半分だと考えると、その価値やいかにといったところでしょうか。

病人たちを癒すキリスト(百グルデン版画)
©2011 The National Museum of Western Art, Independent Administrative Institution National Museum of Art

特に有名なのが、この、国立西洋美術館所蔵の「病人たちを癒すキリスト」。
今回の展覧会にも西洋紙と和紙に刷られた2点が出品されています。


光の魔術師と呼ばれるレンブラントが追い求めたのは、光と影とが織り成す繊細な表情。
レンブラントの版画には、その表情が余すところ無く表現されている気がします。
さらに、版画の特徴として、同じ原版をもとにした、複数の作品を
並べて同時にみることができるという、ちょっと変わった展示の手法も見られます。
オランダのレンブラントが過ごした建物であり、現在は美術館として整備されている
レンブラントハイスをはじめとして、片や大英博物館、片や東京国立西洋美術館。
普段は海の向こうの美術館に離れ離れのきょうだい達が、
まさに時空を超えて一堂に会した、特別な展覧会といった趣です。

西洋美術館で版画の展示室がまるごと改装中だったんですが、
その作品たちに、こんなところで出会うとは!

このきょうだい達を並べて見ていると、
微妙な色合いやインクの乗せかたの違いをはっきりと見て取ることができます。
光や闇の表情を追い求めたレンブラントは、
同じ原版で、紙の材質を変えて何度も刷り直しを行っていました。
特に彼が興味を示し、何度も使ったのが、「和紙」。
洋紙と比べてやや暗めの、ほのかにオレンジがかった仕上がりを好んだようです。

また、版を重ねるにつれて変わっていく表情を見比べられるのも特徴。
展覧会の最後に並んだ「エッケ・ホモ(民衆に晒されるキリスト)」や「3本の十字架」などは、
版の途中で大胆に構図を変えた様がありありと見てとれて、非常に興味深いです。
絵画にはない、版画ならではの醍醐味と言えるかもしれません。

3本の十字架 第1ステート

第1ステートの「3本の十字架」
キリストの足元にひざまずく騎士や崩れ落ちる聖母の姿、
この場から立ち去ろうとする群衆の姿などが見て取れ、
キリストが絶命した後の情景が描かれているといえます。

3本の十字架 第4ステート

それに対して第4ステートの「3本の十字架」
画面構成に大きく手が加えられ、第1ステートで見て取れた人々が見えなくなっています。
これによって、まるで人々の注目がキリストに集まっているかのように、
キリストがこれから絶命しようとしている瞬間にまで時間が巻き戻されているのです。

絵画作品では決して見ることのできない、作者の思考と試行を見ることができる、
そういう意味ではとても興味深い内容です。


また、数が少ないとは言え、絵画も一見の価値ありです。
光と闇とに焦点を当てた作品たちが集っています。
中でも、展覧会の目玉とされている「書斎のミネルヴァ」。
書斎のミネルヴァ
©Private Collection, New York

ミネルヴァは兜を脱いで槍と楯を置き、
戦いの神ではなく知恵を司る神として描かれています。
ふくよかな身体つきは、どこか女神からは離れた印象を受けますが、
穏やかな表情に、若くして死別した妻サスキアの面影を映したと言われれば、
その容姿もなぜか納得できてしまいそうです。
レンブラント特有のどこまでも透き通るような瞳の色。
画面の左上、まるで天から降り注ぐような光の中の凛とした佇まいは、
やはり見るものに神々しさを印象づけます。
個人蔵の作品ですから、この展覧会でしか見ることができないかもしれません。


この展覧会は名古屋市美術館で9月4日まで。
残り期間が短くなっちゃってますから、観るならお早めに( ´ω`)

さて、長くなるのでもうひとつは続きに‥‥
この夏は愛知が暑かったのですねえ‥‥
同じく愛知県は豊田市美術館で開催中なのは、
「フェルメール ≪地理学者≫とオランダ・フランドル絵画展」。
シュテーデル美術館所蔵のフランドル絵画が一堂に会しています。
シュテーデル美術館の改装に合わせて、ごっそりと貸し出されたという、
まさに前代未聞、そしてもう二度と実現しないと言われる展覧会です。
目玉は、フェルメールの「地理学者」。
世界に30数作品しか残っていないといわれる、フェルメールの作品の中でも、
たった2枚きりの男性の肖像が描かれた作品のうちの1枚です。

地理学者

鮮やかなフェルメールブルー、手元や主題以外をわざとぼかした巧みな表現、
何かひらめきを捕まえるかのように、遥かなる大地に想いを馳せるかのように、
中空をさまよう視線。

地理学は、後進国で有りながら貿易で財を成したオランダにとって、
なくてはならない学門でした。
その地理学の学者という姿を通して、
当時のオランダの裕福な市民の姿を垣間見ることができます。

書棚の上の地球儀はインドを、壁に掛けられた地図はヨーロッパを示し、
まさにオランダの商圏を示しています。
学者の肩にかけられた蒼のビロードの上着は「ヤポンス・ロック」と呼ばれ、
交易によってもたらされた日本の着物やその模造品。
見事な蒼色をちりばめたゴブラン織りなど、高価な品々を配することで、
オランダの栄華は大航海時代によって生み出されたことを雄弁に語っています。
そんな中に、壁の巾木としてフェルメールの故郷デルフト特産の、
デルフト焼きのタイルがあしらわれていたりします。


そのほかに記憶に残った作品をいくつか。

マールトヘン・ファン・ビルダーベークの肖像

「マールトヘン・ファン・ビルダーベークの肖像」
この展覧会にもいくつかレンブラントの作品が並んでいます。
その中の一つ。
肖像画ばかり並んだ一角にあります。
何よりも、その澄んだ瞳の輝きに、吸い込まれそうになっちゃいます。
並んでいた他のどの肖像画よりも印象に残りました。


夕食の食卓を片づける女性

「夕食の食卓を片づける女性」
やはり京都のフェルメール展で見たときと同じく、
レンブラントの弟子であるヘリット・ダウの作品。
ろうそくとランタンの明かりだけで照らし出される画面全体が、
どこか懐かしい暖かさにあふれている気がして。


調理台の上の魚

「調理台の上の魚」
ヤーコプ・フォッペンス・フォン・エスの作品。
魚卸組合の公館に飾るため、横長の絵画として特注されたものだとか。
生々しいほどの魚の描写に圧倒されちゃいます。


さて、この展覧会、残念なことに会期は8月28日(日)まで!
この週末で終わってしまうのです。
見に行くなら今が最後のチャンスかも!

また、このレンブラント展とフェルメール展は連動しているようで、
片方の展覧会の半券を見せると、もう片方の展覧会は200円引きで入場できるそうです。
是非両方みてみなきゃ!



ところで、1点、残念なのは、
この豊田市美術館で開催されている「シュテーデル美術館所蔵のフランドル絵画展。
とても‥‥とても‥‥「照明効果が悪い!」のです。

名古屋市美術館では、国際的に定められた照度を守りながらも、
版画の1枚1枚の微妙なニュアンスの違いを感じ取れるよう、
出入り口に暗幕を張るなどの工夫で会場全体は暗く、
それでいて、パナソニックのLEDライトを使うなどで、
作品自体はくっきりと見せる工夫がなされていたのですが‥‥

豊田市美術館では、絵画表面を覆う「アクリル板」に、激しく周囲が映りこんでしまって、
肝心の作品がはっきりと見えないんです。
これまで、こんなにも作品を「アクリル板」が覆っていることを意識したことはありません。
京都のフェルメール展では、筆の生のタッチを見て取れたほどだったのに‥‥。

破損の恐れがないからか、作品の手前に仕切りがないのはいいんですが、
みんな見えづらいものだから、顔を寄せて眉を寄せて目の前で鑑賞しちゃって、
後ろからじゃとてもじゃないけど見えない状態に。

そして、作品自体も暗く沈んでしまっているうえに、
額縁上部の縁の陰が、作品の最上部の色合いを覆い隠している始末。
目玉の地理学者も、手前で放映されている紹介ムービーとは、
まるで色味が異なってしまっていました。
作品たちはとてもいいものばかりであるだけに、がっかり度はかなり高くなっちゃいます。

でもでも、たとえそうだとしても!
見に行く価値はあると思うのです。
この週末が、最後のチャンス。
是非足を運んでみてくださいね~!


▲閉じちゃう▲

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ももの裏稼業繁盛記

ときさんがへにょへにょの間にいっぱい美術鑑賞~♪(*´ω`)
‥‥あんまり遊びすぎてると怒られそうだけど‥‥ストレス解消だもん!いいよね!

まいどこにちはももいのです。
先月に続いて美術鑑賞。
今回は、今ちょうど京都東山の京都市美術館で開催されている、
「フェルメールからのラブレター展」のご紹介。
副題はCommunication: Visualizing the Human Connection in the Age of Vermeer
コミュニケーション:17世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ。


17世紀のオランダにはたくさんの自由がありました。
それは宗教的な自由であり、民族的な自由であり、そして経済的な自由でもありました。
ヨーロッパ中から自由を求めてたくさんの人が集い、経済は大いに発展します。
チューリップバブルのような狂想曲も巻き起こりました。

経済の発展とともに、文化の華も開きます。
絵画の世界では、フェルメールやレンブラントをはじめとする
オランダ・フランドル地方の画家たちが、数多くの絵画を残したのです。


この絵画展では、「手紙」を主題としたフェルメールの3作品を中心に、
17世紀前後のオランダ絵画から、
人々の「コミュニケーション」に焦点を当てた作品が一堂に会しています。

中でも今回の目玉はこちら。
アムステルダム国立美術館により修復されて以来、初めての公開となる、
「手紙を読む青衣の女」

手紙を読む青衣の女
© Rijksmuseum, Amsterdam. On loan from the City of Amsterdam (A. van der Hoop Bequest)

胸元で強く引き絞った両腕。
熱心に、でもどこが悲しげに、手元に落とした視線。
手紙から懸命に何かを読み取ろうとするかのような表情。
背後に掛けられた大きな世界地図が、手紙の主が船の乗組員として、
海の彼方の異国にいることを暗示している、そんな作品です。

左側から差し込む静かな光線。
天然ラピスラズリを使ったウルトラマリンブルーで染められた上着。
深い蒼を湛える2脚の椅子。
テーブルの上に置かれた真珠のネックレスの淡い光。
まるで画全体が一つの物語を形作っているかのよう。

オランダの経済的な発展の中で、それまで公文書などとしてしか存在しなかった手紙が、
次第に個人間の気持ちのやり取りに使われるようになっていったと言われています。
オランダの多くの人々が、船運にかかわる仕事をしていたこの時代、
異国に渡った船乗りとの手紙のやり取りには、往復2年かかったとも。
手紙に書かれた言葉を、大事そうに見つめる彼女のしぐさに、
そんな時代背景を想わずにはいられないのです。

この写真ではくすんで見えますが、それはこの写真が修復前の状態だから。
修復後の今の姿を眼前に見ると、
フェルメールならではの輝きに満ちた色合いに、飲み込まれてしまいそうです。



他にも、手紙や職業、家族、しぐさや表情など、
さまざまな切り口でコミュニケーションをとる人々の姿が描かれています。
その1枚1枚に物語があり、ひとりひとりが何かを語っているかのような、
実に多弁な作品たちでした。


手紙を書く女と召使い
© National Gallery of Ireland.

たとえば、もう1枚のフェルメール作品、「手紙を書く女と召使い」。
女性がただ手紙を書く姿‥‥だけでは済まない背景が、
画の中に織り込まれていたり。


執筆を妨げられた学者

こちらはレンブラントの門弟、ヘリット・ダウの作品で「執筆を妨げられた学者」
小さな作品ですが、物言いたげな鋭い視線が私たちを射抜きます。

ダウの作品ではもう1品、「羽根ペンを削る学者」。
同じく小さな作品ですが、
普段は気難しい学者が、愛嬌たっぷりの表情で羽根ペンを削る姿に、
思わず笑みがこぼれてしまいます。
こちらのページの一番下の画像で見ることができます。


室内の女と子供
© Rijksmuseum, Amsterdam.

そして、ピーテル・デ・ホーホの「室内の女と子供」。
市松模様の床、冷気を遮るために床に置かれた踏み台、窓にはめ込まれた格子など、
母と子の何気ない姿を描いただけでなく、
当時のオランダの家庭の光景が臨場感たっぷりに伝わってくる作品。

壁の足元に張り巡らされたタイルは、子供たちが遊ぶ姿が描かれた、デルフト焼のタイル。
よく見ると、展覧会の会場の中にも同じタイルが張り付けられた場所がありますよ。




見て歩きながらふと思ったこと。
たとえば、チューリップバブルに踊らされた当時のオランダの人々を描いたこの本の、
宿屋や酒場や農村の人々、あるいは公証人や弁護士といった人々の、
生の姿を見られるような、そんな側面も持ち合わせた展覧会と言えるかもしれません。



この展覧会、京都市美術館では10月16日(日)まで開催。
その後、仙台の宮城県美術館で10月27日(木)~12月12日(月)まで、
そして東京渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで、
12月23日(金)~2012年3月14日(水)まで、開催されます。

フェルメールブルーに惹かれる人も、17世紀のオランダに触れてみたい人も、
是非足を運んでみてくださいね。


お土産にはオランダで100年あまりの歴史を持つ、Daelmanのキャラメルワッフルを。
デルフト焼きを模した缶に入ったタイプもあって、なかなかかわいいです♪
寒い時期には、あったかいコーヒーの上に蓋をするようにのせて、
中のキャラメルを溶かしてから食べると、おいしいんですって。

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